人類にとって星を観察する歴史は古く、星の動きから古代エジプト人は暦を作り、
メソポタミア人は占星術を生み出し、現代では遥か遠い星々の環境を把握できるほどに発展しています。
何光年も遠くに地球と似た環境の星が見つかっているという報告もあれば
「まるでSF映画だ」と思える不思議な星が報告されることもあります。
今回は、そんなSFチックな星のなかでも特に不思議な星々を地球では考えられない
現実離れした現象の数やスケールに基づいてランキングし、ご紹介していこうと思います。
※金星以外の各順位のアイキャッチはイメージ画像となります。
第10位 科学者の常識を覆した風が吹く星
金星
星のある場所
太陽から2番目に近く、地球のお隣に位置する惑星です。
地球からは夕方の西の空か明け方の東の空でのみ観測できます。
明け方に見えるものを「明けの明星」夕方に見えるものを「宵の明星」と言い、とても明るく輝いています。
星の特徴
金星は太陽系のなかでも大きさと平均密度が地球に最も似ているため「地球の姉妹惑星」と
言われるそうですが、大気は二酸化炭素が90%以上を占め、温室効果により気温も460℃と高くなっています。
金星には自転速度の60倍以上の速さで風が吹いており、これは「スーパーローテーション」と言われ、
そのメカニズムはとても説明が付かないため金星最大の謎として多くの研究者を悩ませています。
また、金星はその美しさゆえに神話や歴史に語られることが多く、メソポタミアでは美の女神イシュタル、
日本書紀では香香背男(かがせお)という星神、アステカ神話では文化神ケツァルコアトルなどがあります。
第9位 高速自転の星
VFTS102
星のある場所
大マゼラン雲(かじき座からテーブルさん座にかけて位置する銀河)のなかのタランチュラ星雲にあります。
大マゼラン雲は日本からは観測できず、南半球で観測できます。
星の特徴
時速160万kmで自転しており、あまりの速さに星自体が潰れ、赤道付近には光る円盤が形成されています。
高速自転の原因としては、近くを周回していた星の超新星爆発の影響や他の星が衝突・合体したなど
様々な仮説が唱えられていますが未だに原因の解明には至っておりません。
第8位 氷の活火山がある星
トリトン
星のある場所
海王星の衛星であり、海王星の周りを公転しています。
星の特徴
通常の衛星が惑星の自転方向と同一方向に公転するのに対し、トリトンは
海王星の自転方向と逆向きに公転している珍しいタイプの衛星です。
しかし、海王星の重力によって徐々にトリトンの公転にブレーキがかけられてしまい
36億年後には海王星に落下するのではないかと予測されています。
トリトンの表面は窒素の氷で覆われ、氷の活火山が存在しており、気温は少なくとも
マイナス237.6℃だと言われています。
氷の火山からは非常に低い温度で水やアンモニア、窒素などを含む溶岩が噴出されており、
その噴出メカニズムについては海王星からの重力によって起こる説などがありますが確かなことはわかっていません。
第7位 100年以上ずっと夜が来ない惑星
HD131399Ab
星のある場所
HD131399Abはケンタウルス座の方向に位置します。
ケンタウルス座は日本の春の南の空に浮かび、西表島(沖縄県)よりも
南であれば全体を観測可能で、それ以外の地域だと一部のみ観測できます。
星の特徴
3つの太陽が近くを周回しているため昼間が100年から140年ほど続きます。
表面温度は580℃に昇り、高温の大気から鉄のしずくが凝結し、鉄の雨が
降るとも言われています。
他にも複数の太陽を持つ惑星は多くありますが、HD131399Abが特別なのは
超大型望遠鏡で直接観測できる点であり、これにより大気の組成が判明しています。
大気は水素、ヘリウム、メタンなどで構成されており、雲はあまり無いそうです。
また、この惑星は3つの太陽の不安定な領域に存在するため、数千年から1万年で現在の軌道から外れ
宇宙の彼方へ飛んでいってしまうと予想されています。
第6位 地球以上に水の豊富な惑星
GJ1214b
星のある場所
GJ1214bは、へびつかい座のなかにある惑星です。
へびつかい座は夏の南の空に見える星座で、夏の代表的な星座であるさそり座の近くにあります。
星の特徴
地球よりも大きく、比較にならないほどの量の水を有しており、逆に固体状の物質がほとんど無いため
完全に海に覆われている惑星です。
また、高温高圧の環境のため、大気は厚い水蒸気の層となっています。
水を有するというよりは、水でできている惑星と言えるため、研究者たちからは
「The waterworld」と呼ばれています。
生物が生きるために必要な水がこれほどまでにありますから、もしかするとGJ1214bの
深い海の底には生物がいるかもしれませんね。
第5位 色だけは地球にそっくりな惑星
HD189733b
星のある場所
HD189733bは夏の東の夜空に浮かぶ、こぎつね座のなかにあります。
こぎつね座は夏の大三角形のなかにあるので、観測する際には夏の大三角形を探すと早いです。
星の特徴
2005年に発見された地球と似ているコバルトブルーの惑星です。
しかし、地球と似ているのは色だけで、大気は1000℃以上、時速7000kmで横殴りのガラスの雨
が降っている惑星で、地球の環境とは似ても似つかないです。
地球のような青さを持つ理由は大気に含まれるガラスの粒子が光を散乱させているためだそうです。
第4位 ワインの神様バックスも大喜びの彗星
ラブジョイ彗星
星のある場所
彗星は主に氷や塵でできた小天体が太陽に近づいて初めて観測できるもので、
その周期は3年から数百万年まで幅が広く、太陽から離れると観測できなくなります。
このため、太陽を離れるとどの方角にあるのか不明となります。
星の特徴
2015年1月に観測されたラブジョイ彗星は1秒間にワイン500本分のアルコールを
宇宙に放出していることが観測されました。
その他にも糖類を含む有機分子21種類が放出されているとわかり、彗星が
生命の誕生に必要な有機分子の源である可能性を強めました。
第3位 ダイヤモンドの惑星
かに座55番星e
星のある場所
かに座55番星eは春の西の夜空に浮かぶ、かに座にあり太陽に似た恒星かに座55番星の
周りを公転する惑星です。
かに座は目立たない星座なので山や海などの星がよく見える場所かつ、しし座と
ふたご座の間にあると覚えていれば見つけやすいです。
星の特徴
2004年に発見されており地球に比べて大きさは約2倍、質量は約8倍にもなり
「スーパー・アース」という巨大地球型惑星と推定される惑星です。
この惑星の質量の3分の1(地球3個分の質量)はダイヤモンドであると考えられています。
惑星表面は1760℃か2150℃という高温になっているため、生命は存在しないと考えられていますが、
液体状のダイヤモンドが存在している可能性があるなど、今まで知られていなかった化学的性質や
組成を持つ惑星として研究者たちに注目されています。
第2位 約半世紀越しに蘇ったゾンビ星
超新星 iPTF14hls
星のある場所
超新星爆発を起こしているので今は無いのですが、春の北の空に浮かぶ
おおぐま座(北斗七星)の方向、5億光年先にありました。
星の特徴
1954年に一度、超新星爆発して無くなったと思われていましたが60年後の2014年にも再び
超新星爆発が観測され、本来ならありえない二度の超新星爆発を起こした星です。
また、通常100日で輝きを失うところを600日間も輝き続けた異例の星です。
最新の学説ではiPTF14hlsの正体は一つの恒星ではなく、二つの恒星が合体してできた大質量星
である説があり、その説であれば一度目の超新星爆発でエネルギーを使い果たすことが無く
二度目の超新星爆発も可能とのことです。
第1位 誕生の祝砲を上げる星
L1448-MMの中の原始星
星のある場所
牡牛座にあるプレアデス星団のL1448-MMという星形成領域にあります。
牡牛座は真冬の南の空にて観測でき、そのなかのプレアデス星団は牡牛座の
なかでも特に青白く光っている星たちです。
星の特徴
アマゾン川の1億倍の水量を約10万℃、時速19.3万kmで放水し続けます。
L1448-MMにあるこの星は原始星(生まれたばかりの星)であり、原始星では
このような放水現象が確認されるそうですが実際に規模を測定できたのは、この星が初めてです。
この放水は千年の可能性もあるそうです。
最後に
宇宙には地球の常識を越えた様々な神秘がありますね。
古代から続く人類の天体観測は、今では惑星探査機を打ち上げたり高性能な観測施設を作るまでに
発展しましたが、それでも宇宙についてわかったことはごく僅かなのでしょう。
地球人が宇宙で生活する時代はまだまだ先なのでしょうけども、筆者はちょっと憧れがあるので
生きているうちに実現したら嬉しいなと思います。